栄冠に相応しい完成度の「レヴォーグ」
「2020年-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー」が決定した。2019年11月1日から2020年10月31日までに日本国内において販売された乗用車を対象に、選考委員を務める専門家が投票。最高得点を獲得したモデルがその年の栄冠に輝く。
日本カー・オブ・ザ・イヤーが日本車だった場合、海外メーカーで最も高い得票を積み重ねたクルマに「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」が与えられる。輸入車がすべてのクルマを抑えて最高得点だった場合は、それが輸入車であっても日本カー・オブ・ザ・イヤー・カーとして表彰される。近年ではボルボの2年連続受賞が記憶に新しい。
4つの部門賞も設定されている。「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」、「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」、「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」、そして軽自動車から選出される「K CAR オブ・ザ・イヤー」である。
選考は、日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会が認めた選考委員の投票による。選考委員は日頃から知見を高め、数多くの車に触れていることが条件となる。公平に投票しなければならない。つまりは、自動車ジャーナリストとして活動しているメンバーの中から選考委員に選出されることが多いのだ。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠はスバル「レヴォーグ」の頭上に輝いた。新しいプラットフォームを開発し、水平対向4気筒エンジンにもメスを加えた。なにより、高度安全運転支援システムである「アイサイトX」を設定したことも評価された。GPS(衛星利用測位システム)や準天頂衛星システム「みちびき」からの情報を活用するなど、まさに日本で最も権威のあるプライズに相応しい完成度なのだ。
次点はホンダ「フィット」、3位がトヨタ「ヤリス/ヤリスクロス/GRヤリス」である。総合得点で4位になったプジョー「280/e-208」が、規定により「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。
優秀モデル多く…選考委員の得点ばらける
ちなみに、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」はマツダ「MX-30」。観音開きの「フリースタイルドア」や特徴的な造形など、デザインのマツダをアピールするに相応しいクルマだった。「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」はアウディ「e-tron Sportback」。EV(電気自動車)としての完成度の高さは秀逸で、高度な発電蓄電テクノロジーやデジタル式の安全デバイスの数々に加え、パワーも力強く、高級感において秀でている。開発途上のEVはまだ性能ありきであり、実用性の競い合いである。そんな世界にすでにEVならではの高級感に足を踏み入れてきたのは驚きである。
「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」はBMW「ALPINA B3」に決定した。走りは官能的でありながら、パフォーマンスは他の追随を許さない。悩むことはなかった。日産「ルークス」、三菱「ekクロススペース/ekスペース」が「K CAR オブ・ザ・イヤー」に輝いたのも順当な結果だろう。
これが2020年-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終結果なのだが、今年の特徴は、優秀なモデルが多く、平均的に高いレベルで点数が拮抗(きっこう)したことである。スバル「レヴォーグ」が抜きんでたという印象は強いが、選考委員の得点がばらけたのがその証拠だ。その中で「レヴォーグ」が多くの得点を集めたのは、取りこぼしのなさである。つまり、ほとんどの選考委員が満点ではないにせよ、何らかの配点をしていることである。日本カー・オブ・ザ・イヤーの”大賞“は誰もが認めたスバル「レヴォーグ」にこそ相応しい。
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