感情を刺激する電子音…ゲームとの親和性
日産の新型コンパクトカー「ノート」は、日産の浮沈を左右する革新的なモデルになろうとしている。搭載されるパワーユニットは、伝家の宝刀「e-POWER」。直列3気筒のガソリンエンジンを搭載しているものの、それは直接の動力源とはならない。あくまで発電機としての機能にすぎず、エンジンが回転することでバッテリーに電力を溜め込み、その電力利用でモーターを駆動する。ゆえに走りそのものはEV(電気自動車)である。
日産のEV戦略は、「リーフ」の代表されるように純粋なEVと、ノートや「キックス」に搭載されるe-POWERの2本の柱で進められる。
そんな起死回生を担ったノートは実は、環境性能やプロパイロット搭載による安全性能だけではなく、クルマとして忘れてはならない快適性にもメスを入れているのが特徴だ。
そのひとつが「情報提供音」の再構築である。聞き慣れない言葉だが、つまりは電子的作動音。シートベルト非装着の警告音や、半ドア警告音など、クルマには「ピンポン」「ブー」などさまざまな電子音が響く。危険を知らせたり、運転をサポートしたりするあのサウンドだ。後退時の「ピーピーピー」も、情報提供音である。
日産のこれまでの情報提供音は、100種類ほどに増えてしまっていたという。それを一旦整理し、よりユーザーに正しく明確に伝わるように整えたというのだ。サウンドの開発には、バンダイナムコ研究所のサウンドクリエーターの力を借りたという。電子音で感情を刺激するという点では、ゲームの世界と親和性がある。
日産によると、情報提供音の役割は、単純な情報提供だけではなく、エモーショナル(感情的)な領域に広がりつつあるという。まさにゲームクリエーターの得意分野であろう。
携帯通信機能が、ダイヤル式電話のベルやポケベルのような無機質なブザーから、音楽を奏でるスマートフォンに移り変わった。ベルが鳴り響き、注意喚起だけが目的だった駅のホームですら、各駅のイメージにそったメロディーが流れるようになった。クルマの情報提供音がエモーショナルになっても不思議ではない。
自動運転で変化していくクルマの「声」
日産がノートで取り組んだ新しい情報提供音はまず、情報の重要度や緊急度で区分けしている。ピッチやテンポを変えることで人間の感覚に訴えかけるのだ。
ピッチを早めると警告度が高くなる。やや抑えれば注意喚起となる。ウインカー音やリバース音は、ローピッチで伝えるのだ。障害物に衝突しそうな時には、速いピッチでハイテンポの方が伝わりやすい、と言った具合である。
と、そこまでは想像の通りである。衝突の瞬間にのんびりとしたテンポであっては伝わらない。いまさらの感がある。だが新型ノートでは、音を2軸で分析。丸く柔らかい音、軽やかな音、重厚な音、尖った音、それぞれにアジャストしたのである。
ここでそれぞれの音をお聞きいただけないのが残念だが、実際に新型ノートをドライブしてみると、情報提供音が効果的なことがわかる。ダッシュボードにはそのためのスピーカーも組み込まれているから、より一層サウンドを意識することができた。
自動運転の時代がすぐそこに迫ってきており、時代はEV化に向けて突き進んでいる。これからはもっとクルマの「声」が重要になる。エンジンが奏でるエキゾーストノート(排気音)やギアが軋(きし)む唸り音がクルマの「声」だった時代は過ぎ去ろうとしている。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。