電子書店後押し
女性向け官能小説の需要を知らしめたのは、英の主婦、ELジェイムズが書いた『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2012年)の成功だ。女子大生と大企業の若きCEOの性愛を描く3部作は英語圏で8800万部を超えるベストセラーとなり、早川書房が刊行した邦訳版も累計15万部に達した。電子書店や電子版の普及で、人目を気にせずに作品を購入できるようになったことも人気に拍車をかけている。
文芸評論家の伊藤氏貴さんは一連の現象を、「女性の社会進出とリンクした動き」とみる。「官能小説を読むことは自分が“性の主体になる”ことを意味する。女性の性に関する情報は飛躍的に増え、雑誌『アンアン』のセックス特集も今や恒例行事。女性が主導権を握る“性のかたち”が今後もっと描かれていくでしょう」