ミミズがはったような難読のくずし字で、多くの人が敬遠しがちな古文書。だが、担当者が「読めなくても大丈夫」と太鼓判を押す企画展「中世の古文書-機能と形」が、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で開催されている。同館が「空前の規模の総合的古文書展」と自負する展示は、文書の中身ではなく様式に焦点を合わせた内容だ。(磨井慎吾)
見た目で分かる
企画展では、現存品がごく少ない源義経(1159~89年)の自筆書状(重要文化財)をはじめとする古代から近世までの古文書約220点を展示。担当した同館の小島道裕教授は「書式や紙の使い方などの様式は受取人と差出人の関係で違ってくるが、その変化にはきちんと歴史的な背景がある。中身の字を読まなくても、見た目の変化だけでいろいろなことが分かる」と語る。
展示は、古代の文書から始まる。中央集権の律令国家が成立し、日本初の文書による行政が始まった奈良時代。当時の典型的な公文書は、律令の規定に従った肩書付きの署名および公印が特徴とされる。
だが、古代から中世に移行するにつれ、公印が使用される割合は低下。代わりに増えたのが個人署名である花押(かおう)だ。それは平安期に入り、律令の制度が形骸化していった状況に対応しているという。「中世文書の特徴は、公印ではなく個人の花押で済ませるようになったこと。お役所中心の律令国家体制が崩れ、実力のある個人が公的な事柄を決済する時代になった」(小島教授)