16年ぶりの新作『想像ラジオ』では、想像の羽を存分に広げ、震災後の死者の声を軽妙かつユーモラスにつづった。物語の底に流れる〈想像せよ〉というメッセージは、20年前の『解体屋外伝』にある〈暗示の外に出ろ。俺たちには未来がある〉というフレーズとも重なる。
お笑い、音楽、舞台と、多岐に渡る活動の中で、小説が占める位置を聞くと、「文字だけでできた“貧しいメディア”だけれど、想像する内容は読者によって全部違う。絵や映画にない自由度と広がりがある」。畳みかけるように語ってから、「格別の存在ですね」と照れくさそうに笑った。
【プロフィル】いとうせいこう
昭和36年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、出版社勤務を経て、音楽や舞台、テレビなど幅広い分野で活躍。63年に作家デビュー。今年、『想像ラジオ』が第149回芥川賞など複数の文学賞の候補になり、第35回野間文芸新人賞の受賞が決まった。今月、新作『存在しない小説』(講談社)を上梓(じょうし)した。