そしてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)議論が沸騰する中、太陽光パネル設置場所を名目に中国は農地買いを本格化させようとしている。すでに森林資源の多くを日本人ダミーを通して取得したため水資源問題が急浮上、国会では外国人土地所有法の改正が議論されている。
世界に目を転ずれば中国は石油、石炭、ガス鉱区を取得し、レアメタル鉱山から農地購入へ手を染め、つぎに港湾施設から企業買収に至って欧米では大問題に発展した。評者が直近にも取材したドバイでは砂漠の真ん中に新都心をつくり、中国企業が蝟集(いしゅう)するドラゴンモールが開設されていた。
反発も強まりモスクワでは不法屋台から中国人を締め出し、アイスランドではリゾート地購入を断り、アフリカの一部の国では中国の農地買収を認めた政権を転覆させたほどの大騒ぎをしている。本書で河添さんは「日本はこのイナゴの大群の農地買いあさりにどう対応するのか?」と問うのである。(産経新聞出版・1365円)
評・宮崎正弘(評論家)