村上春樹さん(64)や百田尚樹さん(57)らのベストセラー小説が話題をさらった今年の出版界。情報会社オリコンが発表した年間ランキングでも文芸書の好調ぶりが裏付けられた。ただ書籍市場の縮小傾向に変わりはなく、ロングセラーと売れない本との二極化が一層進む現状もうかがえる。(海老沢類)
オリコンの年間総合売り上げトップ10には、期間内の推定売上部数が98・5万部に達した村上さんの長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』をはじめ、小説4冊が入った。これは調査を始めた平成20年以来最多になる。昨年末から今年11月までの累計売上金額でも文学・ノンフィクション部門は前年比110・1%に上り、好調ぶりは際立つ。
背景には実力派作家の大ブレークがある。放送作家出身の百田尚樹さんは、出光興産創業者の破天荒な生涯をドキュメントタッチで描く本屋大賞受賞作『海賊とよばれた男』で読者層を一気に広げた。ソフトな印象のある過去の大賞作の中では異質な「男らしい」物語。価格のはる2巻本という逆風をよそに、期間内の推定売上部数は2巻合計で約137・8万部。人気は旧作にもおよび、映画公開を控えた『永遠の0(ゼロ)』は188万部で文庫部門1位に輝いた。