出版ニュース社の清田義昭代表は「ベストセラー小説が多く生まれたのが今年の特徴で、とりわけ百田さんは多様な題材を書き分ける器用さで読者をつかんでいる。健康への不安など実用書の分野に高齢化社会を象徴する本が並んでいるのも興味深い」と話す。
■書籍全体の売上額は減少
一部のベストセラーに目を奪われがちだが、書籍全体の売上額は伸びていない。出版科学研究所によると、今年1~10月の書籍の推定販売金額は約6720億円で前年同期比1・3%のマイナスだ。年間販売額は3年連続で前年実績を下回るとみられ昭和62年以来26年ぶりに8千億円を割り込む可能性もある。
「飛び抜けて売れる銘柄はあるものの、中くらいのヒットが少ない」と今年を振り返るのは、同研究所の谷清忠さん。発売から1年かけて発行部数を100万部に乗せたシスターの人生指南書『置かれた場所で咲きなさい』などロングセラーは生まれているが、全体を底上げする10万部程度のヒットの広がりがあまり見られないというわけだ。
消費を引っ張る生産年齢人口(15~64歳)は今後も減少が続く上、スマートフォン(高機能携帯電話)などの普及で余暇とお金の争奪戦は激しさを増す。谷さんは「『損をしたくない』という気持ちから読者はシビアに本を選別している。ヒットしやすい映像化の原作でも、手に取ってもらうにはもう一工夫が必要な時代になっている」と指摘する。