周囲の反対をものともせず、信念に従って突き進む良雄さんはオピニオンリーダー。奈名子さんは10年、両親が経営する同社に請われて入社し、父の号令一下、「えー、と言いながら従っていく」。その一例が24年10月のマディソン街出店だ。
「わがままな父が『ニューヨークがいいんだ』と。もう家族会議が紛糾したような感じでした。リーマン・ショック(2008年)でアメリカが沈んでいて、トレンドは中国や東南アジア出店なのに完全な逆張り」
出店準備に追われた奈名子さんは、日米の会計システムの違いから何度も日本と米国を行き来する毎日が続いたが、「父は横で爪を切っている」。
しかし、結果的には1ドル=80円程度の円高のときに資本金を送ることができた。メンズショップが集まるマディソン街は特別な場所。そこに店がある、ということで今後、中国などへも出店しやすくなる可能性もある。
日本人の繊細な気遣いと手先の器用さが発揮された縫製が、鎌倉シャツのこだわり。それをマディソン街の客は説明しなくても理解してくれる。「ごめんなさい、お父さん。あなたが正しかった。巻き込まれたけど、新しい世界を見せてくれた」と感謝する。