「私立文系の受験に数学は必要ないが、『自分は物を書く商売だけど、数学は物事を論理的に考えるのに非常に役立っている』とよく言っていた。『東大は教師はだめだが、友人は良いのがいる』とも。もしかしたら東大を受験してほしかったのかもしれないが、私が上智大だけを受験すると決めたときは特に反対しなかった」
やはり高校の頃、恆存さんに「親の書いた物なんか読むんじゃない」と言われたことがある。家の食堂に母親と3人でいたときのことで、笑いながらだが、はっきりと言われたのを覚えている。
「当時、僕がシェークスピアにかぶれていたのを見て言ったのかな。ただ、その頃、既にシェークスピアの翻訳で父の文体のリズム感を学んでしまっていた。『読むな』と言われても、家にある雑誌を開くと、父の文章が掲載されている。私は父の文章のリズム感が好きで、読むと心地が良いのでつい読んじゃいましたね」