国防上重要な朝鮮半島を中華冊封体制から切り離すことに成功した日清戦争は、日本に台湾という「植民地」をもたらした。欧米の植民地経営とは異なった、ハード・ソフト両面でのインフラの整備を力点とし、第2代総督桂太郎が会頭になって設立した台湾協会の、その学校として設置されたのが台湾協会学校で、拓殖大学の淵源(えんげん)になる。台湾、日露戦争で獲得した南満での権益、合邦により「植民地」となった朝鮮、その地域の人びとと密着して働く人材養成こそこの学校の一貫した事業であった。日露戦争の勝利によるアメリカとの対峙(たいじ)がその後の日米戦争の導因(また中国赤化を進めるソ連)として描かれているが、もはや紹介の余地がない。
素晴らしい本書で多少の瑕瑾(かきん)(例えば満鉄をハルビンからとしているなど)は残念。(渡辺利夫著/PHP新書・945円)
評・伊藤隆(東京大名誉教授)