共同編集が実現した意義は大きい。『GRANTA』の強みは、欧州はもちろんブラジルや中国など10カ国超で現地版を発行する国際ネットワーク。今回英訳された短編が各国の編集者の目に触れて仕事が舞い込む可能性もある。このため日本側の関係者は昨年の文芸フェスなどで海外の編集者と交流を深め、準備を進めてきた。
「実験的な作品が多く、刺激を受けた」(英の編集責任者、ユカ・イガラシさん)と日本の若手の評判は上々。早稲田文学編集室の窪木(くぼき)竜也さん(31)も「想像力の質では日本の作家は見劣りしない。英訳をきっかけに新たな読者を獲得できれば」と期待を寄せる。容易ではない浸透
少子化などの影響で国内の書籍市場が縮小する中、「海外進出は喫緊の課題」(出版関係者)との指摘は少なくない。英語圏では村上春樹さん(65)の成功が知られ、最近では小川洋子さん(51)や中村文則さん(36)らが米の文学賞を受賞して話題になった。ただ、一定の商業的な成功が求められ「刊行される文芸書のうち非英語圏の作品は1%程度にとどまる」(日本財団の辛島デイヴィッドさん)とされる米市場への浸透は容易ではない。こうした中、国際交流基金が昨年から、日本作品の魅力を説く英語冊子を作って海外の出版関係者に配布するなど新たな取り組みが始まっている。