「アメリカは車社会と思われているけど、シアトルではクルマを持たない若い人たちは、路面電車で仕事やデートに出かけるんだ」と、生粋のシアトルっ子・ジョンは言う。
ピュージェット湾を臨むシアトルは、歩いて回っても楽しめるこじんまりした街だ。ストリートは碁盤の目のように整備され、はじめて訪れた旅行者でも、地図を片手に徒歩で迷わず散策できる。もっと“お出かけ気分”を味わいなら、便利なのが“ストリートカー”と“モノレール”だ。
シアトルっ子のデートの待ち合わせはウェストレイク・センター停車場。1ブロック・徒歩2分のエリアに、ストリートカーとモノレールの起終着場がある。モノレールに乗れば、シアトルのランドマーク「スペース・ニードル」や、ロマンティックなガラスの庭を併設したミュージアム「チフリ・ガーデン・アンド・ガラス」へ。ストリートカーは、ボートが並ぶ湖畔に緑豊かな公園が広がるユニオン湖方面へと延びている。
ウェストレイク・センター停車場でストリートカーに乗り、3つめの「テリー&トーマス」でちょっと寄り道。目の前には、シアトルを代表するオーガニックな朝ごはんカフェがある。ここでボリュームたっぷりのパンケーキを満喫し、再びストリートカーに乗車して「レイク・ユニオン・パーク」へ。駅前にある「ミュージアム・オブ・ヒストリー・アンド・インダストリー」は、沿線に本社を構えるアマゾン・ドットコムが出資して建設されたもので、ボーイング社のモデルプレーンなど、地元に密着した展示が興味深い。
現在運行しているのは、サウス・レイク・ユニオン・ラインの1路線のみだが、今年9月には、独立系のおしゃれなカフェが集まるダウンタウンの東側、キャピトル・ヒル方面へのストリートカーも開通するとか。散歩気分で気軽に乗る路面電車には、長距離列車とはまた違う楽しみがあった。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。