「調理前は生の魚介など取り扱いに配慮すべき食材がたくさんあり、衛生上の理由から、外部のかたをお入れできません。また、調理中は火を使っていて危険ですので、食事を提供し終えた夕食後にいらっしゃいませんか」
なんて融通がきくのだろう……。料理長によると、国が新しいオーストラリアでは“オーストラリア料理”という伝統的な定義がないため、料理人はオーストラリア産の材料を使って、自由にレシピを創作して、メニューを決定する会議に提案できるそうだ。年功序列の世界ではないため、若い女性がいきなり料理長に抜擢されたりもする。
彼女が言うには、車内で提供する料理はすべてレシピが決まっていて、誰が調理しても味にばらつきが出ないようにイメージを統一しているとか。とはいえ、料理にはやはりつくり手の個性がにじむもの。2日目以降のベテラン料理人が作り上げる料理もなかなかだったが、若手料理長が描く輪郭のはっきりした料理は、新鮮な味わいだった。
■取材協力:オーストラリア政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。