目当てのトロッコ列車は、透明な屋根がかかった赤いボディの「シーニック・レイルウェイ」。昨年導入された特別仕様車だ。ギネスに認定された最大斜度52度の斜面415mを、2分ほどで一気に下るのだが、特徴はベンチシートの傾斜角度を調節できること。オリジナルなら傾斜は52度、こういうものが苦手なら44度の「レイドバック」、スリルを楽しみたいなら64度の「クリフハンガー」。最前列に乗り込み、シートを64度に合わせる。
映画『インディ・ジョーンズ』のテーマ曲『レイダースマーチ』を聞きながらの2分間。トロッコ列車らしいガタガタした揺れを感じて、なかなか楽しいけれど、残念ながら期待していたスリルはいまいちだ。なぜなら、新しい車両は、安全のためにメッシュ状の金網でしっかりガードされているのだ。
現在の車両は5代目。4代目までは木造で、窓も屋根もなかったそう。安全は何より大切だが、階段にポスターで展示されていた初代のスリリングな列車に1度乗ってみたかった。
■取材協力:オーストラリア政府観光局/ニュー・サウス・ウェールズ州政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。