金髪の兄妹が、運転席にかじりついていた。西オーストラリア州の州都パースから約19キロ、インド洋沖に浮かぶ島「ロットネスト島」に、小さな観光列車「オリバーヒル・トレイン」がある。
パース市民の身近なリゾートであるこの島に、家族で遊びに来た11歳のお兄ちゃんと9歳の妹。運転士のグレッグが「座りたい?」と問うと、妹が運転席によじ上る。自動運転システムが導入されていて、安全上の問題がないとされているため、乗客サービスの一環として、子どもを運転席に座らせることがあるそうだ。
「エクスキューズミー。あなたも座りたいですか」。青い目の兄が紳士的に尋ねてくれたが、すんでのところで自制心が働いた。
鉄道が到着した小高い丘「オリバーヒル」には、第二次世界大戦中、日本軍から本土の港を守るために建設されたという軍事施設があった。この鉄道は、砲弾や弾薬を運ぶために敷設されたという。丘の上には、直径9.2インチの巨大な大砲がいまも残っている。いざというときに備えて用意されたものの、日本が敗戦したため、実際に発射されることはなかったそうだ。それゆえ、状態がいいまま保存されているという。ボランティアガイドの老人が、砲台の下の地下要塞や武器庫などに案内してくれる。