「『赤』というと、官能的で危険な感じ。タイトルはそんなイメージの総称」と島本さん。「自分の小説に対して『繊細』とか『みずみずしい』って表現を使われることが多かったんですね。装丁も白だったり青だったり…。今回は真逆。結婚し子供もいる女性のリアルな『今』を、包みこむような柔らかいイメージではなく、直接的に書きたかった」
鞍田に誘われ、専業主婦だった塔子はやがて仕事に復帰する。会社の気になる同僚男性との関係が加わることで物語は加速し、塔子の感情の振幅も激しさを増す。一人の女性であり母であり妻であり会社員でもある-。幾重もの規範意識にしばられ、欲望と罪悪感や緊張感に身を引き裂かれながらも、自分の人生を主体的に選びとろうとする塔子の姿が印象に残る。
「ずっと子供と家にいてもそれで世界が完結してしまうようで不安だし、外に出てばかりだと今度は家庭が心配になる。いろんなものをため込んで苦しんでいる主婦はたくさんいる。何でも奔放に好きに生きるのがいいとは思わないけれど、そんな女性たちの孤独だったり闇だったり、というデリケートな部分にこの小説が触れられていて、読んで解放されたり楽になる部分が少しでもあればいい」