別に日本人の私にだけ素っ気ないわけではなく、おっくうそうに手を振りながら、どの乗客も公平に淡々とさばいている。彼女たちにとって、市電の乗務員は「接客業」ではないのだろうな。この“めんどくさい”と言わんばかりの愛想のなさは、ヨーロッパの地方の村のローカル線に匹敵する。
だけど。空港では女性も男性も流暢な英語でにこやかな接客をしていた。滞在したホテルや両替に立ち寄った銀行でも、中国人スタッフのホスピタリティの高さに感動した。きっと、まもなく大きな変化が訪れるだろう。この中国風接客も、いまだけしか味わえないのかもしれない。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。