車窓をカメラに収めようと、全開にした窓から身を乗り出すたびに、んん? プラチナブロンドのちっちゃな頭が、ぴょこんと飛び出してくる。レンズ越しにのぞく透明感のあるブルーの瞳は、好奇心できらきら輝いている。小さな天使は、アメリカから来た11歳、5歳、3歳の3姉妹の末っ子。両親と祖母、3世代で家族旅行をしている。
登山鉄道の楽しみは、格別だ。2本のレールの間に敷かれたラックレールのしくみにはいつも感心させられるし、歯車が噛み合うときの重厚感ある低音も旅情をそそる。急勾配に差し掛かると重力を体感できるのもいい。
眼下にはスイスアルプスの雄大なパノラマが悠々と広がっている。乗客はみんな窓を大きく開けて、アルプスの美しい空気を存分に味わっている。「こういう列車は大好き」と、おちびちゃん。大きくなったら鉄道ファンになるかもしれない。
「登山鉄道の旅は、鉄道初心者でも満喫できますね」。そう話すのは、スイスを取材に訪れていたエフエム東京の人気アナウンサー、古賀涼子さん。子どもだけでなく大人でも、この列車は、思わず身を乗り出したい誘惑にかられるのだ。笑顔で車窓を眺める彼女に、列車交換ですれ違う運転手や車掌、乗客がみな手を振って通り過ぎていった。
登山鉄道といえば、日本では、日本が誇る登山列車「箱根登山鉄道」が、昨日11月1日から、25年ぶりとなる新型車両「アレグラ号」の運転を開始した。箱根登山鉄道は、スイスのレーティッシュ鉄道と姉妹鉄道になって35周年の記念年を迎えている。アレグラ号にも近日、乗車してみたいと思う。
■取材協力:在日スイス大使館
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。