安田氏は2008年、エボラウイルス用のプライマーを開発した。だが、現在、西アフリカを中心に蔓延(まんえん)するウイルスは、当時と遺伝子型が異なっており、対応できなかった。
そこで今年6月から、プライマーの設計・改良に取り組んだ。9月にギニアで流行するエボラウイルスの遺伝子を取り寄せ、適合を確認したという。
「RT-LAMP法」は、事前にキットを配布すれば、特別な機器がなくても容易にエボラの感染判定ができる。
一方、アフリカなどで活動する欧州の医師団は、エボラの判定に「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)法を、採用している。
こちらもウイルスの特定遺伝子を増やして判定するのは同じだが、遺伝子複製に温度を何度も変えるなど複雑なステップを経なければならず、高価な専用機器が必要となる。また、判定に1~2時間かかる。
安田氏は「RT-LAMP法であれば、PCR法に比べ、同じ時間で2倍の人数を調べられる。使用する器具も安価で、電力インフラの備わっていない地域でも活用できる。エボラの蔓延を防ぐ武器となる」と語った。今後、世界保健機関(WHO)や流行国の医療機関や大学との連携を視野に入れているという。
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世界保健機関(WHO)は、西アフリカを中心に流行するエボラ出血熱の感染者(疑い例を含む)が16日までに8カ国で1万5145人に達し、うち5420人が死亡したとの集計を発表した。14日発表の前回集計より感染者が732人、死者が243人増えた。
エボラ対策として、欧米の医療チームは現地で懸命の治療にあたっているが、流行地の病院前には感染の疑いのある人が列を作る。
安田氏によると、医療機関における2次感染の危険が増大している。また、患者が診断が受けられないまま、追い返される場合もあるといい、終息のめどは立っていない。
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エボラ出血熱 エボラウイルスに感染すると2日~3週間の潜伏期間を経て、血液が凝固できなくなり、腸管や眼球などいたる所から出血する。致死率は5割を超え、主に体液を通じて感染する。1976年にコンゴ民主共和国のエボラ川流域で初めて流行が確認されてエボラウイルスと命名された。日本国内で感染が疑われた場合、特定感染症指定医療機関か第1種感染症指定医療機関で受診する。