山頂で味わったハッセレーダー。泡がなめらかでのどごしがいい。エコ先進国のドイツでは、ボトルのリサイクルや使い捨てカップをなるべく使わないのは当たり前。今回は撮影のためにプラカップをもらったが、他の人はボトルから直接ラッパ飲みをしていた【拡大】
しんしんと冷え込む空の下、出発準備を手早く進める機関車の汽笛が、長い余韻を残して消えてゆく。からりと乾いた空気のなか、機関車の付け替えを見ながらビールを飲むのは、このうえなく贅沢なひとときだ。ときおり真っ白な水蒸気が、じゅっと大きな音を立て、まっすぐに立ち上る。
年間で250日以上も霧が発生するというブロッケン山の山頂は、幻想的だ。毎年4月30日には、箒に乗った魔女が山頂に集まるという、この山の雰囲気にぴったりの伝説があるそうだ。
車内で飲もうと、もう1本ビールを買い求めると、店主が小さなボトルを出してきた。ハルツ地方の伝統的な薬草を使ったリキュールで、アルコール度数は35度。ビールを飲んだ後ひと息に飲み干すと、ビールで冷えた身体が温まるという。
もみの木も森を車窓に眺めながら、地元のアルコールを並べて魔女と乾杯。大きく揺れる車内で、なんとか飲み干した薬草酒は、なんとも言いがたい微妙な味で、思わずむせ返ってしまった。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。