内閣府の国民経済計算によると、13年度の家計貯蓄率は60年前の1955年度以降で初めてマイナスに陥った。これに対し、企業は潤沢な貯蓄を有し、設備投資の抑制を続けているため、貯蓄投資バランスが高水準の黒字を続ける。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「企業の余剰資金を家計に還流させることが重要だ」と指摘する。これに対し、宮原会長は「内部留保は海外でM&A(企業の合併・買収)をした子会社の株式などがほとんどで、成長のために必要なお金」と反論する。
「経営者も一歩踏み出すべきだ」と、榊原会長は経済界が賃上げの実現に役割を果たすことに期待をかける。その歩幅の大きさこそが、今春闘の最大の焦点となる。(春闘取材班)
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■春闘60年と日本経済の歩み
1955年 私鉄総連など8産業別組合が共闘し、春闘がスタート
56年 公務員の労組も参加し、合同闘争本部を設置
59年 春闘の労働者参加数が400万人に
61年 池田勇人内閣が所得倍増計画発表
63年 好景気を背景に「欧州並み賃金」を目標に掲げる
67年 金属労協が春闘に参加
72年 日経連が生産性基準原理を提示し、個別企業指導を実施
74年 石油ショックに伴う物価高で史上最高となる32.9%の賃上げを獲得
76年 1桁台の緩やかな賃上げに
91年 バブル崩壊に伴い、労働運動が冬の時代に
2002年 連合が雇用の維持を最優先し、ベースアップの統一要求を見送る
09年 前年のリーマン・ショックの影響で企業業績が悪化
10年 連合が、非正規社員を含む労働者の条件改善を目標に掲げる
14年 政労使会議で賃上げの必要性を共有