経団連に加盟する大手企業と、連合に加盟する労働組合を中心に展開してきた春闘だが、60年にわたる日本経済の産業構造の変化に伴い、産業の裾野へ与える波及力が弱まっているとの指摘もある。また、増加を続ける非正規労働者の待遇改善にどう取り組むかも、春闘が解決すべき課題として浮上している。今春闘で、労使は格差の是正にどう取り組むのか。
◆トリクルダウン頼み
「山に来た、里に来た、野にも来た」。経団連が春闘の指針である労働政策委員会報告を発表した20日、宮原耕治副会長は会見で、日本経済の足元の現状を童謡の「春が来た」に例え、大企業の賃上げ効果が広く普及していくことに期待を示した。
しかし、大企業が潤えば、取引先や下請けの中小企業や地方企業にその恩恵が拡散するという「トリクルダウン効果」を信じる経済関係者は少ない。日本商工会議所の三村明夫会頭は「多くの中小企業が賃上げするには、価格転嫁ができるなど経営環境が整わなければならない」と話す。
また、地方企業の再生に取り組む経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦最高経営責任者(CEO)は「GDP(国内総生産)比で2割程度に過ぎない大企業製造業が賃上げしても、地方企業やサービス業にはほとんど広がらない」との考えを示す。
さらに、安倍晋三政権が目指す経済の好循環が「トリクルダウン効果」に頼っていると指摘し、「経済の好循環のためには、むしろ最低賃金の引き上げを議論すべきだ」と提起する。