日本成人病(生活習慣病)学会で特別講演する春日雅人・国立国際医療研究センター総長。父親の食生活が子供の生活習慣病に影響することを報告した=東京都千代田区【拡大】
こうした中、最近は父親の影響を示す論文が欧米でも増えつつある。いずれもマウスでの実験で、父親に高脂肪食を与え続けると、生まれた雌の子のインスリン分泌が悪くなる▽父親に低タンパク食を与え続けると、生まれた子が脂肪肝になりやすくなる-といった研究だ。
春日総長は1月に東京都内で開かれた日本成人病(生活習慣病)学会で特別講演し、父親の食生活が子供の生活習慣病に影響するという、こうした研究の潮流を報告した。これまで2型糖尿病などは先天的な遺伝と生活習慣によって発症することが判明していたが、これに新たな原因が加わることになる。
春日総長は「父親の食生活の内容も重視すべき時代がもうすぐ来るかもしれない」と、今後の研究の進展を注視している。
■「第3の因子」解明へ
父親の食生活が子供の生活習慣病の発症リスクになり得るという研究は、エピジェネティクス(後成遺伝学)という新たな研究領域で説明される。従来は、「先天的な遺伝と後天的な環境という要因が単独ないし、重なることによって生活習慣病が発症する」とされてきた。遺伝子に変異があれば子供に伝わる一方、親の環境の影響は本人一代限りと思われていた。それがエピジェネティクスの研究によって、第3の「遺伝子と環境との間」のメカニズムが解明されつつある。