アンドロイド(左)と採用面接の練習をする女子学生=2月、東京都中野区の「翔和学園」【拡大】
■発達障害の若者が採用面接練習
セーター姿で椅子に座った等身大の女性型ロボット(アンドロイド)が、まばたきをしながら問い掛けてくる。「志望動機を教えてください」
発達障害の若者が通うフリースクール「翔和学園」(東京)で2月にあった採用面接の練習。人、アンドロイド、高さ約30センチのロボットの順に、就職を望む若者が対話する。感じ方の違いを調べる研究も兼ねている。
自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)を抱える杉本恭章さん(23)は「アンドロイドは人より話しやすいが、どちらも緊張した。心臓を万力で締められる感じ。小さなロボットは万力が緩んだ。見た目の違いが大きい」と話した。
親しくない人に話し掛られ会話のペースを乱されると、不安になる。小学3年生の頃、授業中でも図書室に入り浸った。職業訓練を受ける傍ら、9人のヒーローが戦う物語を創作している。
杉本さんは「本に関わる仕事がしたい。アンドロイドと練習し、人と緊張せずに話せるようになりたい」と期待する。
面接を実施した児童精神科医の熊崎博一福井大特命助教(37)と工学者のチームは、自閉症スペクトラムの児童らにロボットが与える影響を2013年4月から研究している。
熊崎医師は「対話が苦手な自閉症の人は話す能力を磨く機会が限られるが、安定した言葉を返すロボットだとストレスが少ない。人工知能が発達すれば支援の可能性も広がる」と意義を語る。
教師はカメラを通じて別室で面接の様子を確認し、パソコンでロボットを遠隔操作して言葉や表情の指示を送信する。学園に一定期間ロボットを置くと、普段は全く話さないのに、ロボットを介してなら話す学生も出てきた。