こんな魅力的なツアーだけに、鉄道ファンが見逃すわけはない。案の定、上環のウエスタンマーケット前では、暮れなずむ街を背景に復元されたクラシック車両を撮影しようと、何人かが三脚を立てて待ち構えていた。
おっ、香港にも鉄道ファンがいるいる。私はいまからこれに乗るんだよ。実際にことばには出さないけれど、自慢したい気持ちで思わず顔がにやけてしまう。が、彼らはいたって冷静だ。後で聞いたことだが、香港の“撮り鉄”は、電車に乗ることにはあまり興味がないそうだ。
なんだ、残念。自分の“乗り鉄”体質を確認した香港の夜だった。
■取材協力:香港政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら