長時間労働と生産性は必ずしも結びつかない。山本教授は「分析の結果、必要な労働時間を超えて非効率的に働いている時間が週に2~3時間あることがわかった。小さいが年間では13~14日分に相当する。効率的な働き方を追求する必要があるが、加えて自分の仕事はここまでだというやるべき仕事の内容を明確化することだ。仕事の進め方が明確になっているほどパフォーマンスも高いという結果も出ている」と指摘する。
実際に人事担当者からも「業務をできる限り細分化して見える化し、誰でもでき、後工程に渡せる仕事を増やすことが必要だ」という意見や「人事評価項目に少ない時間にどれだけ生産性を上げたのかという生産性の指標を入れる予定だ」との企業もあった。
また、国の労働時間政策も重要な鍵を握るが、食品会社の人事担当者は「ノー残業デーをやるとなると、営業から顧客に対応できないという文句が絶対に出る。そうであれば残業を許している現行の労使協定も廃止すればよい。そもそも日本の法律は残業してはいけないのが原則だ。労使協定がなくならない限り長時間残業はなくならないと思う」と語る。
少々乱暴な意見かもしれないが、日本の長時間労働の常態化は労働人口が減少する中で、生産性の低下や女性活用を妨げる大きな要因になっているのも事実だ。個々の企業の抜本的な見直しが急務になっている。
(ジャーナリスト 溝上憲文=文)(PRESIDENT Online)