「高山は小さな京都と呼ばれている」と葛井氏はいう。城下町の中心、商人町として発展した古い町並みは、観光客にとって高山の一番人気だ。しかし、高山市の海外向けのパンフレットは、小京都の街並みだけを前面に押し出すのではなく、大迫力の雪壁で知られる北アルプスの立山黒部アルペンルートや、世界文化遺産に登録されている白川郷など、日本が世界に誇る周辺の観光資源をアピールしながら、その宿泊拠点として便利な高山市を旅程に組み込むように促すことも多い。
「東京や京都のようなブランド力はなく、自然の魅力だけで勝負しても、人気では北海道にかなわない」。高山市はこうした危機感をバネに海外プロモーションに力を入れてきた。東京と大阪を結ぶ観光のゴールデンルートの中間点に位置している好立地を生かし、ルートの途中で立ち寄ってもらうためには、高山市内の観光資源では力不足で、周辺地域との連携は欠かせない。
市外の観光資産をテコに集客
インバウンド獲得の戦略は間違いなく効果を見せている。欧米を中心とした個人旅行の客の中には、すでに高山を宿泊拠点として、アルペンルートや白川郷などに出かける滞在型の旅行が増えている。いち早く、宿泊施設や観光案内などの受け入れ態勢を整備していた効果が出ているのだ。これまでは、雪で閉ざされた冬の高山を訪れる国内観光客はわずかだったが、今では、その雪を見たさに、東南アジアなどの観光客が集まる。雪化粧した古い町並みにも賑わいが絶える日はない。