【IT風土記】岐阜発 「君の名は。」の聖地巡礼だけじゃない 消費呼ぶインバウンド戦略 (3/3ページ)

風情を感じさせる高山市の「古い町並」。海外からの観光客も多い
風情を感じさせる高山市の「古い町並」。海外からの観光客も多い【拡大】

  • 免税カウンターの設置に乗り出した高山本町三丁目商店街振興組合の中田理事長
  • 訪日外国人向けのパンフレットを手に説明する高山市の葛井主査
  • J&J事業創造の大本取締役

 「宿泊施設に関しては、新しい投資も期待できる」と高山市の観光戦略に自信を深める葛井氏だが、課題もある。「観光客を集めるところまではうまくいったが、宿泊や飲食以外にお金を落としてもらうまでにはいっていない」からだ。サイクリングや酒造めぐりなど、体験型ツアーを楽しむ観光客は増えてきたが、モノに関する消費の拡大にはまだ伸びる余地が大きい。「市内に40店舗程度しかない免税店が増えれば、外国人観光客が地場産品や土産などに、もっとお金を使ってくれるのではないか」と葛井氏は考える。

免税店の整備で財布のひもを緩く

 観光立国を掲げる政府も、免税店制度の拡充を進めるなど、地方でのインバウンドの拡大を後押しする。手続き委託型の免税店も認められ、商店街やショッピングセンターなどの特定商業施設内で販売する物品に対する免税手続きを、免税手続きカウンターを設置する事業者に代理することができるようになった。また、免税の対象となる最低購入金額が「1万円超」から「5000円以上」に引き下げられたのに合わせ、消耗品についても最低購入金額が「5000円超」から「5000円以上」に引き下げられた。

 制度改正に伴い、2000円から3000円程度の単価の低い民芸品や伝統工芸品についても、2、3個の購入で免税となる。面倒な手続きを代理してもらえるため、免税店登録へのハードルは低くなった。外国人旅行者向け免税制度に関する協議会の事務局長で、JTBとJCBの共同出資会社であるJ&J事業創造(東京)取締役でもある大本昌宏氏は「日本の免税制度は外国の制度と比べても、観光客にとって手続きが簡単で使いやすい仕組みだ」と評価する。ただ、地方創生に生かすために、地方の販売店での免税対応を増やすには、手続きを代理できる人の手当てが必要になる。

 地方の大型ショッピングモールやアウトレットモールなどでは委託型免税制度の活用は積極的だが、地元の商店街にとっては免税手続きカウンターの設置に二の足を踏むケースが多い。そうした中、高山本町三丁目商店街振興組合が、商店街単独での免税カウンター設置に乗り出した。同商店街振興組合理事長で、ドラッグストアを営む中田中央薬品社長、中田智昭さんはいう。「(免税カウンターの作業は)みんなが思うほど、難しいものではない」。

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