【IT風土記】福島発 スマートシティ技術が結集、地方再生のモデルケース目指す (2/3ページ)

会津若松市のシンボル「鶴ヶ城」。このお城のそばにICT関連企業の誘致の受け皿となるオフィスを整備する計画もある
会津若松市のシンボル「鶴ヶ城」。このお城のそばにICT関連企業の誘致の受け皿となるオフィスを整備する計画もある【拡大】

  • 会津大学で開催された人材育成向け講座。地元企業の経営支援にも活用されている(会津大学提供)
  • 会津若松市の室井照平市長
  • 会津大学の先端ICTラボ「LICTiA(リクティア)」内で取材を受ける会津大学の岩瀬次郎理事
  • アクセンチュア福島イノベーションセンターの中村彰二朗センター長

 ヘルスケアIoT活用し、医療・介護費用抑制へ

 コンサルティングを担うアクセンチュアの中村センター長は「少子高齢化や社会保障費の拡大、エネルギー問題など、日本が抱える課題を解決するには、ICTを最大限に活用したスマートシティは有効な方法で、会津若松市がそのモデルケースになれる」と話す。アクセンチュアは復興から地方創生へ向け、長期的に10万人程度の安定人口を実現するという目標を実現する戦略を策定した。ビッグデータ基盤を活用することで人を内外から呼び込み、アナリティクス産業を作り、データを活用した暮らしの改善を通じて人を定着させる内容だ。

 アクセンチュアが手本にしたのは、デンマークのメディコン・バレーの成功例だった。デンマーク・スウェーデンでは、患者の生涯にわたる電子医療情報(EHR)を共有するオープンデータと規制緩和の政策が、デンマーク・スウェーデン両国の国内総生産(GDP)の2割を占める産業クラスターの構築を可能にした。

 会津若松市のIoTヘルスケアプロジェクトは、病気になる前に手を打つ「予防サービス」を実現し、市民の健康を維持することにより、医療費や介護費用の抑制を狙う。市民はウェアラブル端末を腕に着け、脈拍などの健康データをビッグデータとして蓄積する。室井市長自身も率先して端末を身に着け、参加を呼びかける。室井市長は「データ分析の実証を会津若松が担うことで、日本が抱える医療費の問題解決にも貢献できる」と強調する。医療機関などとも連携し、データに大きな変化があった場合に、参加者にアドバイスを送るような仕組みも検討中で、市民の健康管理への貢献も両立させることが可能だ。

 中村センター長は「会津若松市が目指すのは、健康福祉・医療だけではなく、農業やエネルギー、都市再生・観光など幅広い領域のスマートシティだ」と話す。多種多様なデータを収集・蓄積するビッグデータのプラットフォーム構築がその土台となる。さらに、さまざまな国のプロジェクトを誘致することで、データ分析を担うアナリティクス産業の関心を集め、大企業の機能移転や地元採用を促すシナリオを描く。

先進ICT研究の会津大学による人材育成