分かったのは、ジェンダーによる反対の構造です。「男は仕事、女は家庭」「男性が一家を養うべし」という性別役割観は、昔に比して薄れていると言われます。世論調査のデータでも、そうした意識の変化はみられます。
しかし建前は別として、結婚の統計からは旧来のジェンダー観が未だに根強いことが見えてくる。口先の意見ではなく、人間が実際にどう動いているかの統計は、本当に正直です。
ちなみに、働いて家計を支えるのは女性という社会もあるのですよ。第6回『世界価値観調査』(2010~14年)によると、タイでは、30~40代の有配偶女性の56.8%が、自分が「主たる家計支持者」と答えています(ドイツは27.1%、アメリカは20.1%)。日本はたったの5.0%です。わが国の常識が普遍的などと考えてはいけません。
リンダ・グラットン教授の『ライフ・シフト』に書いてあったような気がしますが、人生の各ステージにおいて、主たる家計支持者が柔軟にチェンジできるようになればいいですよね。こういうスタイルを普及させることも、未婚化や少子化に歯止めをかける戦略といえましょう。
社会の側にすれば、高度な教育で育て上げた女性のハイタレントを十分活用することにつながります。日本の労働生産性の低さは知られていますが、人口の半分を占める女性の社会進出が制限されていることにもよるでしょう。
回を改めてデータを示しますが、日本の高学歴女性のフルタイム就業率は世界でも最低レベルです。ただでさえ労働力が減っているのに、こんな「ムダ」をしている場合ではないのです。
(武蔵野大学、杏林大学兼任講師 舞田敏彦=文・図版)(PRESIDENT Online)