大手外資系消費財メーカーでは研修後に営業部門に新人を配属したところ、2週間後に営業担当課長から人事部にクレームが飛んできた。
「何だよ、あの新人は全然使えないじゃないか。顧客先の納品に連れて行っても挨拶もまともにできないし、率先して物を運ぼうとしないで突っ立っているだけ。どんな教育をしていたんだ」
もちろん新人は一流大学出身の優秀と目される社員である。そんなクレームが他の部署からもたびたび寄せられたため、次年度から新入社員研修をとくに強化することになったという。
日本企業の“お家芸” 新人研修の弱体化
ただし、新入社員研修といっても講義形式主体の研修が大半であり、本当に身に付いたかどうかわからないまま、現場に配属されることも多い。
配属後に行われるのがOJT(職場内教育訓練)だ。一般的に入社後の1年間はOJTの期間とされ、即戦力として活躍するための大事な育成期間に当たる。
新入社員の指導を担当するOJT指導役には入社4~5年目の若手社員を起用し、それを課長がバックアップする仕組みだ。新人の業務を見守り、日常の報告や相談を受けながら業務の手順や結果をチェックし、問題があれば指導することが求められる。
だが、近年は人手不足や業務量の増大、ITの進化による年輩社員の知識不足などの理由で新人をゼロから一人前に育てあげるOJTの機能が低下しているとの指摘もある。