香織さんは当時の自分のことを典型的なニューリッチだったと振り返る。同じ時期に派手にお金を使っていた人は、どこかにいなくなってしまった。ランチ代を1円単位まで割り勘にしていた倹約家の医師夫人は今も健在である。
お金がなくなってからいろいろなことがわかるようになった。長男はホテルから食事が届く「セレブ産院」で100万円かけて出産したが、長女は都立病院で20万円で産んだ。でも痛さには大差なかった。バッグや食器を大切に使い続ける楽しさも知った。そもそも、自分は本当にエルメスのバッグがほしかったのかと考えてみれば、そんなことはなかった。もともと貧乏性なので、高いバッグを持ったら気軽に電車にも乗れず、ほとんど未使用同然だった。すべては見栄だったのだ。
カードも借金だと気づかなかった
幸いだったのは借金がなかったこと。一度、6000万円のタワーマンションを買おうとしたのだが、夫が契約寸前に反対。広告のデザイナーだった夫は職人気質で、不思議なことに妻と一緒にセレブ生活をしていたときも今も、金銭感覚はブレていない。コンピュータの値段には詳しい夫だが、マンダリンオリエンタルホテルのエステが9万円するとは知らなかったのだ。香織さんがプレゼントしたゴヤールのブリーフケースが40万円すると最近知って、腰を抜かしそうになった。
セレブ妻になったつもりで右往左往していたのは自分だけ。男を見る目は間違っていなかった、と香織さんは語る。