
電通本社(出典:電通公式Webサイト)【拡大】
この同盟通信の広告代理店部門が戦後、独立したのが現在の電通だ。日本ほどの経済大国に大手紙がわずか5紙しかなく、多くの広告が電通に集中しているのは、戦争による報道統制の名残りといってよい。
国策通信社への統合は電通自身が望んだことではなかったが、結果的に電通はほぼ独占に近い市場ポジションを得ることができた。これは1種の利権であり、戦後、電通はこの立場を死守するため全力を傾けることになる。
電通にはハードワークの代名詞とも言われる「鬼十則」という行動規範があったが、仕事のためなら全てを犠牲にする独特の社風はこうして出来上がった。
「調整」が膨大な労力に
これに加えて、利益相反の概念が薄い日本の社会風土も電通のビジネスに大きく影響している。例えば、米国の広告業界は、広告を出す広告主側の代理人(エージェンシー)と広告を受け入れるメディア側の代理人(メディアレップ)が明確に分かれており、双方が交渉する形で広告の出稿が決まる。
ところが日本では、電通のような企業がエージェンシーとメディアレップを兼ねており、メディアと広告主の仲立ちをする形になっている。
しかし、できるだけ安く出稿したい広告主と、できるだけ高く売りたいメディア側では、そもそも利害が一致しない。しかも、圧倒的なシェアを持つ電通は利害が対立する複数のクライアントを同時に抱え込むことになる。