大ベストセラー「嫌われる勇気」に広がる誤解 リーダーこそ間違いやすい解釈 (3/5ページ)

『アドラーをじっくり読む』岸見一郎著中公新書ラクレ
『アドラーをじっくり読む』岸見一郎著中公新書ラクレ【拡大】

 したがって、共同体への貢献は特定のある共同体への貢献にとどまりません。理想主義者であるアドラーは、それほど理想的な「共同体感覚」を求めていたのです。

 共同体に所属する人の観点で言えば、特定の組織や誰かから承認されればいいというわけではなく、常により大きな共同体の利害を念頭に置いて行動しなければなりませんし、嫌われようと何をしてもいいというようなことにももちろんなりません。

 共同体への貢献と言う時、その貢献によって得られる「貢献感」は、決して他人から押し付けられたものであってはいけません。貢献感も、共同体と同じくアドラー心理学のキーワードの一つです。貢献感を持てば自分に価値が感じられ、自分に価値を感じられれば、課題に取り組む勇気を持つことできる。この貢献感は自らの内側から得られるようにならなければ意味がありません。

 つまり、働くことでも、勉強でも、老いた親への介護であっても、自分が「貢献している」という実感を持つことが大切なので、貢献感は決して他者から強いられたものであってはいけないのです。

 会社という共同体をどう考えるか

 アドラーが使う共同体という言葉はドイツ語ではゲマインシャフトです。これはゲゼルシャフトと対比して使われます。簡単に言うと、ゲマインシャフトとは家族や地縁といった共同体組織です。ゲゼルシャフトとは、会社をはじめとする産業や文明での営みを前提とした、人為的目的をもって作られた機能的な共同体です。

 この区別に従えば、会社組織は、ゲゼルシャフトです。しかしながら、特に日本の企業は、組織への「貢献」や「忠誠」や家族的なつながりを求めた、ゲマインシャフトのような--あくまでも「のような」--あり方を続けてきました。

 ところで、先に見たように、アドラーは、共同体=ゲマインシャフトという言葉を使っていますから、会社組織という共同体もゲマインシャフトになります。これはどう解すればいいでしょうか。

 私の父は昭和ひと桁生まれの会社員でしたが、父の会社では元旦に社員一同が集まって年頭の挨拶をする慣習がありました。

 さすがに今ではそんな会社はないでしょうが、通勤電車でも会社のバッジを付けていたり、昼休みにも社員証を下げていたりする人などは、企業へ忠誠を誓い、それによって誇りを得ているのではないでしょうか。過剰なまでの忠節を提供し、人生を担保されているかのように見えます。

モーレツ社員が定年退職後に行きどころを失うワケ

産経デジタルサービス

IGN JAPAN

世界最大級のビデオゲームメディア「IGN」の日本版がついに登場!もっとゲームを楽しめる情報をお届けします。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

「ソナエ 安心のお墓探し」では、厳選されたお墓情報を紹介! 相続、葬儀、介護などのニュースもお届けします。