そう遠くない未来に多くの仕事が消滅すると予測されている。英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授によれば20年以内に日本人の仕事の49%が機械や人工知能に置き換わるという。この予測に対して、なぜ多くの日本人は危機感を抱けないのか。『仕事消滅』(講談社+α新書)の著者・鈴木貴博氏が、「3つの誤算」を指摘する--。
「仕事はなくならないよ」という誤算
人工知能とロボットの進化によって人間の仕事が機械に奪われている。これまでもそうだったのだが、これから先、「仕事消滅」の加速が予測されている。
具体的に言えば2025年頃に人工知能が運転する完全な(世界基準ではレベル5の)自動運転車が登場する。その結果、数年の間にタクシードライバーや路線バスのドライバー、長距離トラックのドライバーなど車の運転を職業としている人の仕事が消滅すると予測されている。
このことを労働問題の専門家と議論すると「今、少子高齢化で人手不足の問題がこれだけ議論されているのだから、人手がいらなくなるという話が歓迎されるのはあたりまえだよ」と諭される。この「仕事消滅」だけで日本では123万人分の労働人口が減ることに相当するのだが、自動運転車の開発に関するニュースはそのことを大きくは報じない。むしろ2025年に向けて世界の自動車各社がいかに研究開発を急いでいるかとか、それによって運送業で無人輸送が可能となって過重労働の問題が解消されているとか、ポジティブな話題としてしかこの問題は取り上げられていない。
確かに私も経営コンサルタントとして企業の抱える問題を解決するのが仕事だから、人手不足が産業全体で今の問題として大きいということはわかっている。しかし「人が足りないから人が要らないようにしてしまおう」という技術革新の先には、それまで働いていた人にとってみじめな未来が待っているはずだ。