研究開始から2年後、減量効果がもっとも小さかったのは、低脂質食でした。中性脂肪値がもっとも減少しなかったのも、低脂質食でした。善玉コレステロール値も、低糖質食に比べて比較にならないほど改善がみられませんでした。
さらに6年後。減量効果は2年後と同様、低脂質食がもっともありませんでした。6年間を通して、常に減量効果は最下位でした。
動脈硬化指数は改善せず、むしろ悪化しました。
この結果は、当時、医学界でもセンセーショナルなものでした。多くの医師が信憑性を疑い、世界各国で追試験が行なわれたほどでしたが、追試験の結果はどれも変わりがなく、カロリー制限の優位性が失墜し、現在に至るのです。
バターやフォアグラは健康にいい
同じく2013年発行の『The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE』では、「低脂質食」「ナッツ摂取を推奨する地中海食」「オリーブオイル摂取を推奨する地中海食」の3グループを5年間にわたって比較した論文が発表されました。*2
地中海食は良質な脂質を摂取するため、カロリーは高くなります。が、ナッツ、オリーブオイル推奨の両グループとも、低脂質食に比べ、心血管系疾患(心筋梗塞、脳卒中など)の発症率が低いという結果でした。
ナッツやオリーブオイルはヘルシーなイメージもあると思いますので、健康の敵のように思われている飽和脂肪酸(バターやフォアグラに多い動物性脂肪ともよばれる油脂)を摂取するグループと、摂取しないようにしたグループを比較したデータもご紹介しましょう。
この論文では、飽和脂肪酸をそのまま食べたグループと、飽和脂肪酸をリノール酸に切り替えたグループを比較しています。*3
リノール酸は不飽和脂肪酸。俗に健康によいと信じ込まれてきました。
ですが結果は、バターやフォアグラを食べたグループのほうが、心血管系疾患の発症率も、死亡率も低かったのです。
また、日本人の場合でみますと、飽和脂肪酸の摂取量が多い方が脳卒中の発症率が低く、心筋梗塞の発症率については、飽和脂肪酸の摂取量の影響は無いに等しいというエビデンスもあります。*4
これらのエビデンスが意味することは何でしょうか。