二つめは自己制御のためのエネルギー。「眠いけれど早く起きなければ」「面倒だけれど調べておこう」といったように、私たちは日常の様々なシーンで自己制御のためのエネルギーを消費しています。全ての頼まれごとに答えていては、このエネルギーが本来使われるべき場面以外で浪費されてしまいます。
自己制御のためのエネルギーが浪費されると、普段はなんてことない場面でも自分をコントロールできなくなってしまうのです。ダイエットなどを想像するとわかりやすいと思いますが、一時的に自己制御に必要なエネルギーが枯渇し、ちょっとした我慢ができなくなるというのはよくある話。断らないことによる小さな負担が、挫折しやすい状況を作るとしても、皆さんは無理をして引き受けることを選ぶでしょうか。
断れないことによるリスクは自分が見積もっている以上に大きいもの。しかし、配慮なしに断ってしまえば、やはり不都合がおきてしまいます。どのように断ればデメリットを最小限にできるでしょうか。
◆正当な理由があるときこそ感情緩和の言葉をプラス
日本人が断りに用いる二大表現は、詫びと理由の表明です(藤森弘子[1994]「日本語学習者にみられるプラグマティック・トランスファー断り行為の場合」)。
例)「せっかく頼ってくれたのにすみません。月末は余裕がなくて手伝えないんです」
しかし理由を伝えるときに、引き受けられないことの正当性を主張するようなニュアンスになってしまうと、思わぬ反発に繋がってしまいます。
引き受けると他の大事な仕事に支障がでるといったケースでも、正しさを主張し過ぎない配慮は必要です。具体的な対応策として、相手の感情を緩和するフレーズをプラスするという方法があります。