厚生労働省はこれまで、労使の取り決めのひな型となる「モデル就業規則」で許可なく副業した場合は懲戒対象になると規定。事実上、禁止していた。
だが、総務省が12年に実施した調査では、副業を希望する人は10年前に比べて約1割増加。ここ数年は、ロート製薬やソフトバンクなどの大手企業でも副業を認める動きが広がりつつある。厚労省はこうした流れを受けて先月、モデル規則を改定。副業を禁じる項目を削除した上で「労働者は他の会社等の業務に従事できる」と明記し、容認に方針転換した。
長時間労働の懸念
労使の中には政府の方針転換への異論も根強い。連合は「生活費を得るため、やむを得ず副業する人もいる。いたずらに後押しすべきではない」と訴える。経団連も厚労省のヒアリングで「制度的な課題が多く、推奨するのは抵抗がある」と距離を置いた。
労使が最も懸念しているのが労働時間管理だ。労働基準法は原則1日8時間、週40時間までと定めているが、副業に関する規定はなく、仕事の掛け持ちによる長時間労働の責任の所在は曖昧だ。
厚労省は通達で「複数の会社で勤務する場合は労働時間を合算する」との解釈を示しているが、労働法制に詳しい荒井太一弁護士は「企業は副業の時間まで把握できないし、労働基準監督署もチェックしていない」と実態とのずれを指摘する。一方、労働時間が短いケースも問題がある。本業と副業の勤務がいずれも週20時間未満では、厚生年金や健康保険に加入できない。雇用保険も対象から外れるため、本業、副業の両方で失業しても給付が受けられない。
こうした複雑な課題に対応するには時間がかかるため、荒井弁護士は「副業が今すぐ主流になるとは考えにくい。広まるとしても、当面は企業から雇用されるのではなく、自らが事業主となって働く形が増えるのではないか」と予想している。