ノリの病害や赤潮の兆候を探れ
ノリの養殖では、アカグサレ病などの深刻な病気が発生する懸念がある。アカグサレ病に感染すると、ノリの葉体に穴が開いたり、色が赤くなったりして品質低下を招く。感染力が強く、一度発生するとあっという間に周辺に拡大し大打撃を与えてしまう。2015年には生産量が半分近くまで落ち込むほどの被害があったという。品質低下につながる赤潮も毎年のように発生しており、漁業者を悩ませている。
県のノリ養殖の研究機関である佐賀県有明水産振興センターでは養殖最盛期に定期的にパトロールを行いながらアカグサレ病や赤潮の発生を調査。漁業者も漁場を見回りながら、海の変化を観察している。同センターの荒巻裕副所長は「病気は早期に発見しないと手遅れになる。定期的に船を出して、ノリを採取し、顕微鏡で菌の有無を調べている」という。約30万枚ものノリ網が設置されている漁場全体をくまなく調べるのは至難の業だが、ドローンやICTブイを使えば、漁業者の目が届かなかったエリアや時間帯の海の変化も監視できるようになる。
固定翼型のドローンは一般的なマルチコプター型に比べ、長時間の飛行が可能だ。上空から海面の変化を撮影できる機能があり、海面の状況を画像で把握できる。NTTドコモの協力を受けて携帯電話の通信機能を搭載し、撮影した画像のリアルタイム送信の実用性なども検証していく。
また、NTTドコモから海水の温度と比重を測定するセンサーと通信機能を備えた「ICTブイ」の提供を受け、ブイから送られてくるデータも活用。空からの画像と海から得られるデータを蓄積し、AIを用いて分析することで、赤潮の発生エリアや病気が発生しやすい兆候などを見える化し、スマートフォンや携帯電話を通じて漁業者に情報提供する仕組みの構築を目指す。NTTドコモ九州支社の淵上豊崇ICTビジネスデザイン担当課長は「漁業者の問題解決にわれわれのICT技術が応用できるなら意義は大きい」と話す。