若手社員に大人たちが「三年は辞めるな」という理由 “転職したい症候群”が読むべき『社畜上等!』 (2/3ページ)

『社畜上等! 会社で楽しく生きるには』(晶文社)
『社畜上等! 会社で楽しく生きるには』(晶文社)【拡大】

 例えば、我々社畜の宿命である「希望外の仕事をやらされる」問題。大望ある若者はどう向き合うべきか。

 「希望の部署じゃないとヤダ!」なんて、単なる若者のわがままのようだが、常見氏は「この批評は実は日本企業の雇用形態の問題を的確に表現」しているという。新卒の、とくに文系の正社員総合職は、往々にして入社後に配属部署が決まる。つまり大半が何をやらされるか分からないまま入社するのだ。このご時世に自主的にキャリア形成できないという論点も孕み、これは日本の労働現場の問題としてあげられる。

 しかし、常見氏は「悪だと言い切れるか」と問う。会社の醍醐味とは、この仕事を「やらされる」という行為が個人のキャリアの幅を広げることだといい、例としてプロレスラーの佐山サトル氏をあげている。

 佐山氏は、人気マンガ『タイガーマスク』を現実にデビューさせるという企画を持ちかけられ、一度は拒否するも何度も頼まれ、一回だけなら……という条件でやむなく虎の仮面をかぶることになる。その衣装はまさに「布切れ」同然。だが、この一回きりの約束だったタイガーマスクは、一夜にしてスーパースターになった。言うまでもなく、佐山氏の人生とプロレス界を大きく変える、大ブレークのきっかけになったのだ。

 詳しくは本書に譲るとして、無茶振りのような仕事も不本意な異動も、ビジネスパーソンとしての総合力を底上げするチャンスだ。自戒を込め、若者は“○○のプロ”として早く成長したいと願うものだが、スキルの幅を広げるうってつけの機会ぐらいに考えて、どっしり構えてもいいのかもしれない。

そんなに転職したいなら「エア転職」すればいい

 口を開けば「転職したい」と繰り返す人の中には、転職に振り切れない理由がある。それは「今の自分だと受からなさそう」だとか「今の会社は給料だけはいい」といったことだ。

 そこで常見氏は「エア転職」を勧めている。転職活動のようなものをやると、自分の強み・弱み、現在の職場の長所・短所、世の中の現実を知ることができるという。

例えば、人材紹介会社に登録してみる。しかも複数のサービスに登録することで、各社の強い分野をマークし、より相性の良いカウンセラーを探せるようにしておく。

「三年は辞めるな」の真意