ヘルスケア

「後見人」になれる親族はわずか3割 親が認知症になると銀行口座は凍結される (4/5ページ)

 ただし、申し立てには、家庭裁判所による認定が必要で、手続きは煩雑です。また親族であれば後見人になれるとは限りません。2015年の統計では、親族が選任されたものは全体の約29.9%。親族以外の弁護士や司法書士といった第三者が選任されたものが全体の約70.1%でした。

 後見人は本人の財産を守る存在です。必要最低限の財産使用はできますが、それを超える出費は裁判所の了解を得なければいけません。つまり、親の預金を自由に使えるようになるわけではないのです。追い詰められたSさんは成年後見人になることで自らの生活崩壊を防ぎましたが、代わりに煩雑な手続き抱え込むことになってしまいました。

 では、どうしたらいいのでしょうか。

 「一番いいのは、親御さんが元気なうちに、もしものことがあった時に備えて金銭面での問題をクリアにしておくことでしょうね。ただ、これが難しい」(Iさん)

 老親にお金の話をどうやって相談すればいいのか

 そもそも財産を子どもに知らせる親はほとんどいないそうです。親子関係が感情的なもつれなどで微妙な状態にある場合、財産の額や預金通帳のありかを教えると「子に取られてしまうのではないか」という心配があるのかもしれません。一方、関係が良好だったとしても、財産を知らせて「それしかないの?」といった反応を示されるのは、プライドを傷つけられる恐れがあるのでしょう。

 また、この類いの話は「自分が死ぬ」あるいは「認知症になる」ということを前提としたもの。あまり考えたくない話題ですし、子の側から切り出しにくいテーマです。結局、親子で何も話さない。アンタッチャブルな領域なのです。

 「ただ、前向きな動きもある」とIさんは言います。

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