【著者は語る】オメガ・パートナーズ社長 長谷川貴博氏「AI化する銀行」


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 ■銀行の未来像と行員に求められる能力とは?

 人間が作ったはずのAI(人工知能)をはじめとする機械が人間の能力をはるかに超え、私たちから仕事を奪う脅威となる。その恐怖がついに現実になったかのようなニュースがしばしば報じられています。

 中でも代表的に扱われることが多いのが「銀行業務」です。数字とAIは親和性が高く、数字を扱うことが多い銀行業務はAIに切り替えやすいというのがその大きな理由です。

 AIの導入によって日本の銀行が、そして銀行員の働き方が劇的に変化します。単純作業は真っ先にAIに切り替わり、速いスピードと高い精度で大量の業務がさばかれていきます。長年の経験がものをいう業務でさえも、AIが膨大なデータから傾向・対策を導き出し、正確に業務を遂行していくでしょう。

 私は、ITエンジニアになるために富士通に入社。みずほフィナンシャルグループで金融とITの融合が進んでいたトレーディング業務などに携わり、金融ITベンチャーで金融工学部門のマネジャーを経験しました。2015年から、AIを活用した高度な金融業務システムを開発する会社を経営しています。

 かつて自らも銀行員として働き、現在もシステム開発を手掛けている身として言えるのは、AIの導入が不可避となった今、これからの時代の銀行員に求められるのは、ITの基本的な知識と最新事例を、収集・分析・評価し、自らの仕事に応用していく力だということです。

 文系学部出身の銀行員にしてみれば、「今さらプログラミングや統計などの知識やスキルを身につけるのは無理だ」という人もいるかもしれません。

 しかし、世界に目を向ければ、欧米諸国の銀行員や金融マンは、ITリテラシーが非常に高いといわれています。多くの業務がAIに切り替わったとしてもIT部門やIT業界へ移ることで、これまでの知識と経験を存分に生かしてシステムやAIの開発に携わっています。

 本書では、世界の金融業界でどのような変化が起きていて、どれほどの業務がAIに切り替わっているのかを解説。AI時代の銀行の未来と今後求められる銀行員の能力を提言しています。自身のビジネスに置き換えるという意味では、さまざまな業種のビジネスパーソンにも一読の価値があるのではないかと考えています。(864円、幻冬舎メディアコンサルティング)

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【プロフィル】長谷川貴博

 はせがわ・たかひろ オメガ・パートナーズ代表取締役社長。東北大学大学院理学研究科数学専攻修了、京都大学MBA(金融工学コース)修了。富士通に入社し、金融システム・エンジニアとして、システム開発プロジェクトに多数参画。その後、みずほフィナンシャルグループのクオンツ・アナリストに転身し、デリバティブ・ビジネスやリスク管理業務に従事。Sound-Fの金融工学部門マネジャーを経て2015年から現職。高度市場系金融システム開発プロジェクトへの参画、金融業務向け人工知能開発、ブロックチェーンを活用したインフラ構築ビジネスに従事している。