仕事・キャリア

昔は「停年」!? 日本だけの慣習、最高裁の判例でも認められている定年はなぜあるのか (3/5ページ)

 私などはそう訴えたくなるのだが、それよりおかしいのは、「おかしい」と感じている人があまりいないことである。労働組合などが反対してもよさそうだが、歴史を遡ると組合側が「雇用保障」のために定年制を要求していたりする。世間でも定年制自体は議論になっていないし、誰に話しても「しょうがないんじゃないの」「そういうものなんだから」「だって定年なんだから」という答えが返ってくる。「定年」だから定年、というわけで、どうやら「定年」は公的な制度というより日本に根づいた慣習、いや超法規的な風習に思えてくるのである。

 定年は「学校と同じ」なのか

 「学校と同じですよ」

 さらりと解説してくれたのは斉藤和夫さん(55歳)だった。彼は都内のホテルに勤務する会社員。5年後、正確にいえば5年後の誕生日の月末に定年退職することになっている。

 --学校なんですか?

 私が訊き返すと、彼はすらすらと語った。

 「小学校は6年、中学・高校はそれぞれ3年で、大学は4年。それで会社は60歳まで。『なんで小学校は6年なんだ?』と思う人はいないでしょ。それと同じで会社も60までなんです。そういうふうに体に染みついているんですよ」

 小学校からすでに始まっている「定年」。会社を3年で辞めてしまった私などはさしずめ中退者ということなのだろうか。

 「それに『定年』を意識するのは子供ができた時です。その子が大学を卒業する時に自分は何歳なのか、とね。ウチの場合は30歳の時に生まれたので、その子が順調に大学を卒業する時に私は52歳。『定年』まであと8年ある、という計算になるわけです。40歳の時に子供ができたりすると、大学卒業前に『定年』になっちゃうんで、これはヤバい。いずれにしても『定年』は子供の学校と連動して考えるんで、やっぱり学校なんですよ」

 常に学校がベースになっており、年齢も「学年」のようなのである。

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