【高論卓説】人生100年時代の設計 リカレント教育拡充、基本構想に期待


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 厚生労働省の平均寿命の年次推移によると戦後間もない1947年の男性の平均寿命は50.06歳だ。70年ほど前には50歳というのが人生の一つの区切りでもあった。一方、2016年の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳となっている。ここでいう平均寿命とは16年に生まれた子供の平均余命で、筆者のように還暦を迎えた者の平均余命は23.67年で、平均寿命は83.67歳となる。では余命はあと20年余りかというとそうでもない。

 「人生100年時代」は17年の流行語大賞にノミネートされた言葉だが、これからの人生は100歳まで生きることを前提に考えないといけないようだ。昨年発足した内閣府の人生100年時代構想会議(以下100年会議)の有識者議員にも選出されているリンダ・グラットン氏の共著「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」によると、ほんの1世紀以上前に生まれた子供が105歳まで生きる確率は1%に満たなかったが、現在先進国で生まれる子供は、50%を上回る確率で105歳(日本は107歳)以上生きる。

 過去200年間、平均寿命は10年に2年以上のペースで延びてきており、今20歳の人は100歳以上、40歳以上の人は95歳以上、60歳以上の人は90歳以上生きる確率が半分以上あるという。

 100年会議では、この人生100年時代を見据えた経済社会の在り方が議論されている。日本が持続的成長を続ける上で、最大の障壁である少子高齢化に立ち向かうための重要テーマとして、「生産性革命」と「人づくり革命」が取り上げられ、その中でリカレント教育(学び直し)の拡充が重要な鍵と位置付けられている。ただ高等教育の無償化政策が人づくり革命に含まれているので、バラマキ批判でそちらにばかり焦点が当てられているきらいがある。

 人生100年時代には大学まで教育を受け、新卒で会社に入り、定年で引退して老後を送るという3ステージの画一的な人生から、何歳になっても学び直し、職場復帰、転職を行うような一人一人のライフスタイルに応じた、マルチステージの人生設計が必要とされる。そこでリカレント教育の拡充が重要な意味を持つことになる。

 15年の4年制大学への25歳以上の入学者の割合は経済協力開発機構(OECD)平均が16.6%に対し、日本は2.5%で3ステージの人生を前提にした教育から脱却できていない。17年度に63万人弱だった進学者数は33年度には57万人弱になり、40年度は50万人強に減少する。

 進学の対象となる18歳人口も92年の205万人から減少を続け09年以降120万人前後で推移してきたが、18年以降は再び減少を続け30年には105万人、40年には88万人に減ると推計されている。日本人の若者だけを対象にしていては、大学経営そのものが成り立たない時代を迎えているのは間違いない。

 リカレント教育の地域連携の一つである公開講座などを実施する大学も増えている。15年度の講座受講者数は約139万人だったことから、潜在ニーズも大きい。筆者が住む千葉県東葛地区にある麗澤大学は79年から社会人向けの公開講座を実施しており、17年の受講生は延べ2655人で、聴講生も毎年20人程度受け入れている。学び直しの対象となる世代として、100年会議が今夏にまとめるリカレント教育拡充に向けた基本構想に期待したい。

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【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 旭リサーチセンター、遼寧中旭智業研究員。早大卒後、旭化成工業(現旭化成)入社。広報室、北京事務所長などを経て2014年より現職。60歳。大阪府出身。