
日本科学未来館の展示「未来のドラッグストア」。アレルギー性鼻炎や胃腸薬でも、個々の遺伝子の型に合わせた薬が登場することを予測している=東京都江東区(吉沢良太撮影)【拡大】
先進医療は、研究段階から実用化を目指す第一歩の位置づけで、新しい技術の安全性や効果を評価する仕組み。同病院はがんゲノム医療を行う「中核拠点病院」に指定されており、1年後の保険適用を目指す。同センターの中釜理事長は「ゲノム情報に基づいて診断をすると、患者に、より有効性の高い薬を提供できる。それを公的保険で利用できるようにすることに意義がある」と力を込める。
対象は、がんの発生場所が分からず治療選択が難しい患者や、効果の確立した既存の抗がん剤治療を終えた患者など205~350人。公的医療保険が一部しか適用されないため、患者には約50万円の自己負担がかかる。
4月末、同病院の専門医らが治療方針を検討する会議(カンファレンス)に集まった。一般的なカンファレンスと違うのは、医師らの手元に患者のがん細胞の遺伝子変異の解析結果があったこと。診療情報と照らしながら、こんな会話が飛び交った。
「希少がんの男性。この検査結果からは(女性特有の卵巣がんに承認された新薬)PARP(パープ)阻害剤が候補になる」