【IT風土記】三重発 アコヤ貝の“声”を読み解き海の異変を察知「貝リンガル」 (2/4ページ)

 アコヤ貝の貝殻の片方に磁界を検出する「ホール素子センサー」、もう片方に「小型磁石」を取り付け海に沈める。磁界の変化によって貝殻の開く大きさや開いている時間などを計測するのだ。貝の動きを海上のブイにあるデータ収集装置に集め、通信回線で研究所のパソコンに送信。真珠研究所では湾内の数カ所に設置した「貝リンガル」の情報を24時間態勢で監視している。海面から海底まで一定間隔で貝を配置し、どの水深で異常が発生しているのかもチェックしているという。

多徳養殖場に設けられた貝リンガル。ブイの上に太陽電池が設置され、電力が確保されている

多徳養殖場に設けられた貝リンガル。ブイの上に太陽電池が設置され、電力が確保されている

 天敵「ヘテロカプサ」

 「貝リンガル」開発のきっかけとなったのは、1990年代前半に英虞湾で「ヘテロカプサ」と呼ばれる新種のプランクトンによる赤潮が相次いで発生し、真珠養殖に甚大な被害が発生したことだった。ヘテロカプサはアコヤ貝をはじめとする二枚貝を直接攻撃して、死に追いやる。真珠研究所は、赤潮の原因がヘテロカプサであることを突き止め、その対策に乗り出した。

 ヘテロカプサからどうやってアコヤ貝を守るか。当時、真珠研究所所長だった永井清仁シニアフェローは、九州大学で赤潮の研究をしていた本城凡夫(つねお)教授(現香川大教授)と連携し、アコヤ貝の生体反応を活用した検知装置の開発に取り組むことになった。

 しかし、開発は一筋縄ではいかなかったという。「アコヤ貝の反応を調べるために心電図や筋電計などを試したんですが、うまくいきませんでした。センサー探しに苦労する中、見つけ出したのが磁束密度を計測する現在の仕組みでした」と本城教授は振り返る。ホール素子センサーは、小型軽量で貝殻に取りけるだけで貝にストレスを与えずに貝の開閉の動きを検知できる。ホール素子センサーの計測技術を持つ東京測器研究所の協力も受けながら、2004年、「貝リンガル」の実用化にこぎつけた。

貝リンガルのブイの下には、センサーを取り付けたアコヤ貝が網に入れられ、海に沈められている

貝リンガルのブイの下には、センサーを取り付けたアコヤ貝が網に入れられ、海に沈められている

言葉を話しているように反応に違いが