【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(557) チェコの人形劇団を堪能したら… (2/2ページ)

 ライフスタイルが、どんどんホームレスおばあさんふうになりつつあるのだ。

 そんなわけで、この日もデパート内のより心地よい場所を求め転々として優雅なる時を過ごした。

 そして、クライマックスはチェコの人形劇の華麗なるドタバタアクション活劇の三銃士を堪能。その甘美な時間を終えて、帰ろうとしたときだった。

 マナーモード中の携帯が、ブルンブルンする。

 いつもならスルーするのだけれど、なぜか機嫌よく電話に出てみたら、誰かが「今、どこにいますか?」とか「リュックサックが…」と焦った口調で言っていた。

 で、気づいた。

 背負っていたはずのリュックサックを背負っていない。どこかに忘れてきたリュックサックを、中を調べて名刺を見つけ電話までしてきてくれた人がいたのである。「お財布とか大事なものが全部入ってるようですよ」と。

 そんなわけで、心ある人に拾われたリュックサックも本人が気づく間もなく手元に戻り、なんとも素晴らしい夏の一日だったのである。(ノンフィクション作家・久田恵)