【虫撮り人】(4)トンボ 飛行王との熱い空中戦

シオカラトンボ(右)を牽制しつつ、雄の後ろに雌が連結して飛ぶギンヤンマのペア=国営昭和記念公園
シオカラトンボ(右)を牽制しつつ、雄の後ろに雌が連結して飛ぶギンヤンマのペア=国営昭和記念公園【拡大】

  • 水上に垂直姿勢でホバリングしながら産卵するオニヤンマの雌=国立市泉の城山公園
  • 旧盆の暑い日に群れで飛ぶウスバキトンボ。飛ぶ姿を撮るのは至難の業だ=国立市泉

 トンボは高度な飛行術をもつ昆虫界の「飛行王」だ。4枚の羽を別々に動かし急旋回に急加速、空中で静止するホバリングまで自由自在。飛ぶ姿を撮る「飛翔(ひしょう)撮影」にこだわってきた昆虫写真家で保育園長、佐伯元行さん(59)にとってトンボは最高の“好敵手”なのだ。

 出かけたのは国営昭和記念公園(東京都立川・昭島市)。大小の池があり、変化に富んだ水辺環境に多様なトンボが生息している。

 池辺を歩くと、ひときわ大きなギンヤンマの雄がいた。縄張り意識が強く、岸寄りを巡回してシオカラトンボを追い出そうとしている。行動パターンを読み一瞬を狙って連写するが、ピントを合わすのは至難の業だ。なにせギンヤンマは最高時速70キロ以上ともいわれる「王の中の最速王」。撮影はまさに空中戦だ。

 別の池で、ギンヤンマの雄と雌が連結したタンデム飛行を見つけた。シオカラトンボを牽制(けんせい)しながら産卵場所を選んでいるらしい。

 国内最大のトンボ、オニヤンマと出会えたのは国立市谷保の城山(じょうやま)公園だ。薄暗い清流を好むため、ギンヤンマとは生息環境が異なる。小川の上を何度も往復しながらパトロールする姿は貫禄がある。しばらく見ていると、上流方向へ行った雌が戻ってこない。追ってみると、水面上で産卵中だった。垂直姿勢で1分以上もホバリングする飛行術に感服した。

 国立市南部を流れる府中用水沿いにウスバキトンボの群れがいた。盆トンボ、精霊トンボの別名を持つ。佐伯さんはレンズを広角に換え、早撃ちガンマンのような動きでファインダーをのぞかずシャッターを切る。網で捕るよりはるかに難しい技だ。青空にとけそうな薄茶の飛翔がレンズに切り取られた。

文・石塚健司、撮影・佐伯元行