iPS医療、富士フイルムが治験へ 企業初、年度内に国へ申請

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 富士フイルムは23日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いる移植医療の臨床試験(治験)を平成30年度中に厚生労働省へ申請する方針を明らかにした。31年にも治験を始める考え。実現すれば企業として国内初のiPS治験となり、大学などが中心だったiPS医療の裾野が広がる。

 治験の対象は白血病の治療で骨髄移植を受けた患者の約4割がかかる合併症「急性移植片対宿主病」。移植骨髄に由来するリンパ球が患者の正常細胞を異物と認識して攻撃し、皮膚炎や肝障害、下痢などを起こす。国内の発症者数は年間1千人以上とみられる。治験ではiPS細胞から作る特殊な細胞を患者に注射し、リンパ球による攻撃を抑えるという。

 富士フイルムによると、医薬品医療機器法に基づく国の審査機関との事前交渉をほぼ終えた。治験を経て、34年に製造・販売の承認を目指す。米国でも治験を申請する計画だ。

 世界初のiPS治療は26年、理化学研究所などが目の難病患者に行った。これまで国内で認められた臨床研究や治験は重症心不全、パーキンソン病など4例。直近では今月、iPS細胞から作った血小板を移植する京都大の臨床研究が厚労省の部会で了承された。

 医療分野を次の成長領域と位置付ける富士フイルムは、日本初の再生医療製品を発売したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングを26年に子会社化するなど、iPS細胞を用いる再生医療に注力してきた。

 企業によるiPS医療の治験は、大日本住友製薬やベンチャー企業のヘリオスなども計画している。